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第2話 報われる瞬間(吉田善一
「辞めるのかね?」
「はい。とてもいいお話をいただきまして、そちらで頑張ってみたいと」
四十代既婚者の有能なスタッフから、突然辞職の意を告げられ、少々驚いたが……
新しい職にやる気を見せて、彼の瞳はキラキラと輝いている。
「わかった。君に辞められるのは惜しいし、私個人としても寂しいが……」
「吉田さん……ありがとうございます。そのようなお言葉をいただき、本当に嬉しいです」
「辞めても、たまには顔を見せてくれるかね?」
「は、はい。吉田さんがそう思ってくださるのなら、お邪魔させてください」
「うん。それと、もし何か困ったことがあったら、いつでも相談してきなさい」
「は、はい」
スタッフは、少し瞳を潤ませ、嬉しそうに下がって行った。
残念だったが、彼の未来は明るい。善一はそれが嬉しかった。
夜も更けてから、仕事を終えた藍原が部屋に遊びにきてくれた。
いつものように、爽様や鈴木様の職場でのご様子を教えてくれる。
二杯目の紅茶を注いでやりながら、善一はスタッフがひとり辞めることになったと話した。
「そうですか」
「寂しいが……とてもやりがいのある仕事のようでね、彼の表情は光り輝いていたよ」
「よろしかったですね。吉田さんの教えを受けて成長したスタッフです。どこに行っても、成功するでしょう」
「かなり厳しく指導しているが……こういう瞬間に報われるよ」
藍原は、善一の気持ちをすべて受け止めるように微笑んでくれる。
その夜、寝床に入った善一は、幸せな気持ちで目を閉じたのだった。
つづく
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