苺パニック

サイト11周年記念特別番外編

 
主の憂い


第6話 ほっと一安心(藍原要



その夜、要は主に呼ばれた。

書斎に出向き、中に入ると、机に向かっていた主が立ち上がる。

おひとりのようだ。

鈴木苺は、すでにベッドで夢の中なのだろう。

「有能なスタッフを引き抜いてくれたものだな」

爽様は責めるように言うが、その声には笑いが滲んでいる。

「その点は大丈夫ですよ。吉田さんの手で、次々に有能なスタッフが育っていますからね」

「確かにな。だが……要、よくやってくれた」

主の言葉に、要は苦笑した。

「好きでやったことです」

「苺のために?」

「ええ、三割ほどは。残り七割は我が主のため、と申し上げておきましょう」

はっきり言うのは照れ臭く、要は澄まして答えた。

「苺も、ご婦人方も、私が関わっていると思っていたようだったぞ。お前はそれでいいのか?」

「問題がありますか?」

「そうだな。問題だ。感謝はお前に向けられるべきだ。というわけで……苺」

うん?

戸惑った瞬間、机の下からひょこっと鈴木苺が姿を現した。

「鈴木さん?」

まったく予想していなかったので、さすがの要も驚いた。

「藍原さん、ありがとう。苺、感謝感謝ですよ!」

鈴木苺は感謝を連発する。しかも、嬉し涙に掻き暮れながらだ。

やれやれ。参ったな。

しかし、これで、この件に関して鈴木苺がため息をつくことも、そのため息に爽様が憂えることもなくなった。

主に仕える者として、ほっと一安心というところだ。

嬉しそうに涙を零している鈴木苺と、その彼女を愛しそうに見つめている主の様子に、要は満足の笑みを浮かべたのであった。





おわり






プチあとがき

これにて、特別番外編は終わりとなります。
いかがでしたでしょうか?
少しでも楽しんでいただけたなら、嬉しいです(*^。^*)

お読みくださり、ありがとうございました。

fuu(2016/7/3)


  
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