kuruizakiに、ふぁんたじーだ
  
  恋に狂い咲き パラレルストーリー
  300万・400万ヒット記念企画 特別編
  (登場人物、狂い咲きのメンバー)



第二話 驚きの真実



タクミの住む屋敷へとやってきたカズマは、来訪したことを門番に告げると、そのまま中へと入った。

中庭を進んでいるところで、屋敷の正面玄関のドアが開き、タクミが姿をみせた。

「よお」

「ああ。わざわざ来てもらってすまない。今日にでも、もう一度出向こうと思っていたんだが」

「別にどちらが来たっていいさ。それで?」

「ここではな。入ってくれ」

カズマはタクミの後に続いた。

「ご両親はそろってお出かけか?珍しいな」

屋敷の中はしーんと静まり返っていた。

「もうすぐクリスマスだからな」

ひどく重い言葉だった。その表情も翳りが感じられ、重い…

クリスマスなのが、相談事と、なにか関係あるのだろうか?

「それが?」

「あとは、部屋に入ってからだ」

タクミはきっぱり言うと、さっと踵を返し、歩調を速めて歩き出した。

その後にカズマも続いた。





「毎年、両親はこの時期に家を空けるんだ」

タクミの部屋のすわり心地のいい椅子に座ったカズマは、眉を上げた。

「そうなのか?」

「ああ。そしてクリスマスイブの日に帰ってくる」

「ふーん。で、お前はそれが何故なのか、理由を知らないわけか?」

「知らなかった」

カズマは過去形の言葉に、タクミを見つめた。

「理由がわかって、それで俺に相談事が出来たというわけか?」

「ああ。そのとおりだ」

「それで?その相談事とはなんだ?」

「まあ、その前に話すことがある」

カズマはタクミが話し出すのを、ソファにゆったりと凭れて待った。

数秒の間、顎を摘んで考え込み、タクミはやっと口を開いた。

「今回俺は、両親の後をつけたんだ」

「ほお」

「西の森だった」

「西の森?あそこは」

「ああ。妖精国がある」

「入れたのか?」

「いや。妖精たちが入れてくれるのを、ただ願って、両親は待っていた」

カズマは頷いた。

妖精族は人間を嫌う。
そう簡単に人間を招いてはくれまい。

「しかし、毎年とは…。どうしてそんなにしてまで、妖精国に」

「妹がいた」

「は?」

妹?

「誰の?」

「僕のだ」

カズマはまじまじとタクミを見つめた。

「お前、一人っ子だろう?」

「ああ。そう思っていた。昨日までは」

それでは本当に、タクミには妹がいたというのだろうか…

カズマは会話の内容を頭の中で整理した。

「まさか?」

そう口にしたカズマを見て、タクミは苦笑を洩らした。

「相変わらず鋭いな。そのまさからしい」

カズマは眉をしかめて考え込んだ。

タクミの両親が、クリスマスのこの時期だけ妖精国に行くのは、どうしてかタクミすら知らない妹が妖精国にいて、娘に会うために出掛け…

「逢わせてもらえていないということか…ずっと?」

「ああ。いくら頼んでも、許可は下りないようだ」

タクミは痛ましい目で、床を見据えている。
カズマの胸も傷みに疼いた。

「妖精族は、君の妹を取り上げたということか?しかしなぜ、君の妹を取り上げたりしたんだろう?なぜ返してくれないんだ」

「わからない」

沈痛な面持ちの友に掛ける言葉を、カズマは思いつけなかった。

初めからいないものなら、なんということもないが、実は妹がいたのだと知ったら…

「それで?俺に何をして欲しい?」

タクミは、苦しげに息を吐き出し、厳しい顔つきでカズマに向いた。

「お前、妖精国の王と、知り合いだとか言っていただろう」

「知り合い…というと語弊があるな…ずいぶん前に仲たがいしてから、奴とは会ってない」

「だが、知り合いには変わりない。カズマ、両親のためにも、妹を妖精国から連れ戻したいんだ。力を貸してくれ」

タクミは強張った顔で、深々と頭を下げてきた。

カズマは、タクミの頭を見つめ、顔をしかめた。

「なあ、ひとつ聞きたい」

「なんだ?救い出す役に立つことなら、なんでも聞いてくれ」

「いや。お前の両親はどうして、クリスマスの時期と決めて、妖精国に行くんだ?何か理由があるんだろう?」

「それは俺にもわからない。だが理由はあると思う」

「どうしてご両親に聞かなかった?」

「妹のことは、両親から聞いたわけじゃないんだ。ウメから無理やり聞き出したのさ」

「そういうことか」

「どうだ。なんとかなるか?カズマ」

「なんとかなるかと聞かれても、答えようがない。だが、なんとかならないか策を考えてみよう」

タクミの顔に、ほっとしたように笑みが浮かんだ。

「頼む。恩にきるよ」

カズマはその後お茶を馳走になり、早々に辞去した。

タクミに妹…

正直信じられない気持ちでいっぱいだった。

タクミとは幼馴染で、物心ついたころから遊んできた仲だ。

妹が生まれたなら、カズマだって知らないはずが無い。

タクミに至っては、実の妹なのだし…知らないというのは普通ではない。

カズマは眉をしかめた。

普通で無い出来事が起きたからこそ、タクミの妹は妖精国にいるのだろう。

いったい何が?




   
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