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ナチュラルキス
natural kiss
「ナチュラルキス」番外編
森沢大樹視点
『増すばかりの困惑』
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※このお話は、2013年の11月に、
どこでも読書さんのエタニティフェア用として、書かせていただいたお話です。
サイトでの掲載の了承をいただけましたので、掲載させていただきました。
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第3話 うまくない冗談
「ありがとう」
お礼を言うと、榎原はほっとした顔でこくんと頷いた。
榎原さん、いい子なんだよな。
千里の親友なだけあるというか……
広澤のことでは、彼女も色々悩んだのだろうな。
「それと……広澤だけど……大丈夫だと思うよ」
榎原は大樹の目を見返す。
彼は頷いてみせた。
「僕が見る限り、あいつの君に対する気持ちは、それほど強いものじゃないと思う。君のこと、いいなと思ってたのは確かだけど……」
まあ、そういうことだといいなという見解混じりの発言なわけだが……
榎原の心も軽くしてやりたい。
「森沢君、ありがと」
「うん。これまでどおり、生徒会の仕事も手伝ってくれると助かるよ。……それじゃ。あ……彼氏との待ち合わせの時間、大丈夫だったかい?」
「う、うん。遅れてくるって……」
そのとき、人がやってきた気配がして、大樹はさっと視線を飛ばした。
なんと、佐原教諭だ。
「さ、佐原先生」
思わず叫ぶ。佐原のほうもこの遭遇に驚いたようだ。
「森沢?」
「佐原先生、どうしてこんなところに?」
「お前こそ、どうしてこんなところにいる?」
「僕は榎原さんに話が……」
榎原さんの待ち合わせの相手、まさか佐原先生だったり?
いや、まさかな。
大樹は榎原に視線を移し「あって」と言葉を結んだ。
「話? それで、その話ってのはもう終わったのか?」
「まあ、終わりましたけど……」
そう答えたが、もっと説明が必要かもしれない。
こんな場所にふたりきりでいたとなれば、佐原にあらぬ誤解をさせてしまうかもしれない。
「あの。榎原さんは……」
ふたりは誤解を受けるような関係ではないことを説明しておこうとしたら、佐原に手で制された。
佐原の視線は榎原に向いている。
「森沢は知ってるのか?」
佐原の言葉に、大樹はおおいに戸惑った。
さらに榎原は、佐原に向けて困ったように首を振るではないか……。
このふたり……もしや知り合いなのか?
しかも、かなり親しそうだが……
「そうか。……森沢」
「はい」
「飯沢は知っていることだが、こいつは俺の婚約者だ」
こ、婚約者?
この榎原さんが、佐原先生の?
「僕を担ごうなんて……」
馬鹿馬鹿し過ぎて唖然としたが、徐々に笑いが込み上げてきた。
こんなにもうまくない冗談を、この佐原が言うとは……
それが笑えてならない。
「それにしても佐原先生らしくないですよ……てか、もう少しましな作り話を……」
「事実だからな」
不機嫌そうに言われ、大樹は顔をしかめた。
彼は助けを求めるように榎原に顔を向けた。
動揺を見せていた榎原は、大樹と目が合うと、「あはっ」と声を上げて笑う。
彼は噴き出した。
「榎原さんと先生がなんて、誰も信じやしませんよ。それに先生……僕は佐原先生が、彼女と一緒にいるところに、偶然通りかかったことがあるんですよ」
凄い美人だった。
そういえば、化粧をしたときの榎原さんになんとなく似ていて……
「ああ。そうだったな」
佐原は腕を組み、相槌を打つ。
そして「森沢」と呼びかけてきた。
大樹は考え込みながら、「はい」と返事をする。
「お前の彼女の飯沢だが、今度の土曜日、俺たちの結婚式に来て貰うことになってる」
結婚式?
佐原先生が結婚する?
意表をつかれ、ぽかんとする。
こんな冗談を、しつこく口にする佐原ではない。
ということは、千里はマジで佐原先生の結婚式に?
困惑は増すばかりだった。
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プチあとがき
どこでも読書さんにて、
2013年の11月に掲載していただいた番外編「増すばかりの困惑」です。
一年がたち、サイトに掲載してもよいということになり、掲載させていただきました。
佐原と待ち合わせていた沙帆子を、森沢が見かけ、話かけてきたときの場面です。
佐原から結婚の話を聞かされ、さすがの森沢君も、信じられないようです。
森沢サイドから見たお話、楽しんでいただけたら嬉しいです♪
すでにどこでも読書さんで読んでくださっていた方にもお楽しみいただけたら嬉しいです。
fuu(2014/11/27)
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