ナチュラルキス ハートフル
natural kiss heartful


christmas特別番外編



3 鋭い眼光



「うわーっ、けどどうしよう? わたしに、敦さんのパートナーなんて務まるのかなぁ?」

「務まる。務まる」

敦に重きを置いていない千里は、ずいぶんと軽く言う。

「あっ、でも、パーティーってどんな服を着てけばいいの?」

沙帆子はふと思いついて千里に尋ねた。

「結構本格的な感じでやるらしいよ。フォーマルなドレスがいいって。男性はスーツだそうだし」

フォーマルなドレス?

こ、この話が現実になれば、わたし、スーツの佐原先生と一緒に、フォーマルなドレスでパーティーに参加できるの?

考えただけでドキドキしてくる。

「ねぇ、それって、沙帆子の結婚式で着たドレスでいいのかな? いまは真冬だけど……」

「いいと思うわよ。会場まではコートを羽織っていけば、会場内は温かいはずだもん」

「そうか、そうだね。ドレスでパーティーかぁ。ドキドキしちゃうね? そう言えば、沙帆子のお色直しのドレス、最高に素敵だったよねぇ。可愛くもあり、可憐でもありで」

詩織のお褒めの言葉は照れ臭かったが……
あのドレスをまた着られるチャンスが巡って来るなんて、やはり嬉しい。

それに、千里と詩織のドレス姿も、また見られるんだなぁ。

「詩織と千里のドレスもすっごく素敵だったよ。ふたりともとっても似合ってた」

そんな会話で気分は高揚してきたが……やはり不安も湧く。

佐原先生が、パーティーに参加してくれるということになったとしても……

「ねぇ、啓ちゃんがパーティーに参加するって言ってくれたとしての話だけど……わたし、佐原先生とペアでパーティーに参加していいのかな?」

「その点は問題ないんじゃない。あんたには化粧マジックがあるじゃないの」

化粧マジック?

「あんだけ化ければ、誰もあんただとは気づかないわよ。それよりも、佐原先生を知っている学生は多いから、多少騒がれる覚悟は必要だぞって、あっちゃんは言ってたわ」

騒がれるのか?

渋い顔をしてしまったら、詩織は心配そうに沙帆子の顔を覗き込んできた。

「沙帆子ぉ。まさか、行くのやめたりしないよね?」

「う、うーん」

「まあ、沙帆子次第だけどね。あんたが止めるなら、わたしらもやめとくわ。で、これまで通り三人でパーティーしよう。それも悪くないよ」

千里はそう言ってくれるが……

ふたりとも、パーティーに行きたいんだよね?

「どのくらい騒がれると思う?」

騒がれるのであれば、やっぱり行きたくない。先生も嫌だろうし……

本来の目的のパーティーを楽しむことができないんじゃ、参加する意味がない。

「さあねぇ?」

「けどさ、敦さんが誘ってくれたわけだし……敦さんはそんなに心配してないから誘ってくれたんじゃないかな?」

詩織ときたら、懸命に言ってくる。はやり、そうとうパーティーに心惹かれているようだ。

「まあね。……なんかあっちゃんによるとね、嘘か誠か、啓ちゃんレベルの後輩が複数いるとかでさ……」

ええっ!
あ、あの佐原先生に匹敵する後輩が、なんと複数も?

沙帆子も目を丸くしてしまったが、詩織は沙帆子以上に仰天している。

「そっ、それほんとなの⁉ あの啓ちゃんだよ。あの啓ちゃんに匹敵するひとがいるってのは、なんか信じ難いよ。しかも複数ってさ」

口にする詩織は困惑顔だ。

「けど、あっちゃんはそう言うのよ。だから、二年前に卒業した啓ちゃんが参加したからって、そんなに騒ぎはしないって……」

「うーむ。敦さん情報だもんね。きっと本当なんだよ」

詩織は納得顔で言い、急にテンションを上げた。

「ふたりともぜひ行こうっ! 啓ちゃんレベルの人たちを、わたしゃこの目で拝みたいっ‼ 絶対拝みたいっ‼」

詩織は大興奮で叫ぶ。

そんな詩織を見て、千里も笑っている。

けど、佐原先生レベルのひとが複数いるというのであれば、佐原先生は二年前の卒業生なんだし、全然大丈夫そうだ。

「わたしも先生レベルのひとを見たいかも」

気が楽になった反動で、なにげなく口にしたら、千里がくるりとこちらを向いた。

鋭い眼光にビクリとする。

「あんた、その台詞! 啓ちゃんの前で絶対に言うんじゃないわよっ‼」

恐ろしい形相の千里にビビり、沙帆子はこくこくと頷いたのだった。





つづく





プチあとがき

パーティーに行く話になって、沙帆子たち三人の会話が3話も続いてしまいました。(;^_^A

次は視点が変わる予定です。

読んでくださってありがとう。
お次もお楽しみにぃ♪

fuu(2016/12/21)



   
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