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ナチュラルキス ハートフル
natural kiss heartful
christmas特別番外編
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8 みんなで変身
「こんな風に本格的なお化粧をするの、わたし初めてかも。文化祭とかでもお化粧したけど、ここまでしっかりメイクじゃなかったからさ」
麗子に化粧をしてもらった詩織は、それはもう興奮しておしゃべりする。
今日はいよいよイブのパーティーだ。
千里と詩織は果樹園の家に来ていて、三人とも麗子に髪をセットしてもらい、さらに化粧もしてもらっているところだ。
沙帆子たちが大学のクリスマスパーティーに行くことが決まり、啓史が麗子に頼んでくれたのだ。ドレスアップできたら、大学まで麗子が送ってくれることになっている。
当初の予定では、啓史の車で大学まで連れて行ってもらうことになっていたのだが、なにやら敦の車がエンジントラブルを起こしたらしい。
三十分ほど前に、敦から電話がかかってきて助けを求めてきたのだ。
それで啓史は、急きょ敦の家に向かった。
かなり不機嫌なご様子だったけど……なんだかんだ言っても、友の窮地には駆け付ける、やさしい先生なのだ。
啓史は、敦と、千里の彼氏である森沢大樹を乗せて大学に向かうことになるようだ。
一緒に行けなくても、会場ですぐに合流できるんだものね。
大学で行われるパーティーなんて、未知の世界でほんとドキドキしちゃう。
ドキドキしつつも、行くことが決まってからというもの、指折り数えて楽しみにしていた。
それにしても、詩織は化粧をしても可愛いな。それでも高校生には見えない。
「うわーっ、千里ぉ、すっごい綺麗だよぉ」
詩織がまたまた興奮した声を上げる。二番手の千里の化粧も終わったようだ。
しっかりとメイクを施された千里は、惚れ惚れするほど美しい。
一年の時、学園祭の劇で主役をやった千里が思い出される。
あの時の千里は、それはもう評判になったんだよね。
「さあ、沙帆子さんの番よ」
「は、はい。お願いします」
千里が立ち上がり、沙帆子は入れ替わりで椅子に座った。
麗子はすぐに化粧を始めてくれる。
「ねぇ、わたし老けて見えない?」
千里が詩織に話し掛けている。それに対して詩織は、「確かに、かなり年上に見えるかも」と答える。
もおっ詩織ってば、そんな言い方しちゃダメだし。
「やっぱり?」
千里はひどく不安そうだ。
ここは何かフォローをと焦っていたら、麗子がフォローに回ってくれた。
「千里さん、高校生に見えないように化粧をしたのよ」
「そうなんですけど……大学生に思ってもらえないくらい年食ってるように見えるんじゃないかと思って」
「千里さんったら」
千里の言葉にウケたようで、麗子は大笑いする。
「あ、あのね千里。わたし、悪気で言ったんじゃないんだよ。とっても綺麗で……こう、高嶺の花的な、崇高な感じだって言いたかったんだよ」
今度は詩織が慌てて口にする。
高嶺の花とか崇高と言う表現は、確かに当てはまってる。
「千里、すっごい綺麗だよ。森沢君も惚れ直すよ」
沙帆子がそう言ったら、千里は珍しく顔を真っ赤にした。沙帆子に向けて何か言おうとするが、口にできずにいる。
「千里?」
「照れちゃって、千里可愛い」
詩織が愉快がってからかったら、案の定、千里は詩織のおでこを力いっぱい指で弾いた。
「いでっ! ううっ……痛いよぉ、千里ぉ」
詩織は千里から距離を取り、涙目で文句を言う。
すると麗子が声を上げて笑い出した。
「ほんと楽しいわねぇ」
麗子は、それはもう嬉しそうだ。
そんな風に喜んでもらえたら、頼んだこちらとしても嬉しいわけで。
十分ほどして沙帆子のメイクも完成し、三人して顔を見合わせる。
最初は真面目な顔をしていた三人だが、同時に噴き出してしまった。
「わたしら、大学生の女子に見えるかな?」
詩織は顔をほころばせて口にする。
「うん、いいんじゃないかな。麗子さん、どうですか?」
千里は、詩織と沙帆子の間に入り、ふたりの腰に腕を回して麗子に尋ねた。
麗子は並んでいる三人を見つめ、笑顔で頷く。
「ええ、三人とも高校生には見えないわ。さあ、支度が整ったし、さっそく会場に向かいましょう」
「はい、麗子さんお願いします。ほら、ふたりともコートを着て、バッグも忘れないのよ」
「はーい」
いつものように千里に世話を焼かれ、沙帆子と詩織はそろって返事をした。
そして沙帆子は、胸を弾ませつつ白いコートを羽織り、さらにパーティー用の洒落たバッグを手にしたのだった。
つづく
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プチあとがき
クリスマス特別番外編
クリスマスが二日過ぎてしまった……
ということで、第8話は沙帆子視点にてお届けしました。
ついにパーティー当日。
三人は着飾って会場へと向かうこととなりました。
敦は、しっかり企み実行中のようです。笑
続きもお楽しみにぃ♪
fuu(2016/12/27) |
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