2006年 新年のご挨拶



『思いは果てしなく』・『恋は難敵』 編


尚「響君、早く、わたしたちの番になっちゃったわ」

響「え、もう。成道がどこにもいないんだけど」

唯「すみません、相沢さん、あらためて新年の挨拶なんかするの嫌だっておっしゃって、どこかに…」

(不安げに成道を探す唯の視線が、遠目に成道を発見)

「あ、あそこにいらっしゃるみたい。相沢さん」

(唯に手を振られて、慌てて反対方向へと逃げてゆく成道の姿)

響「あっ、あの野郎、逃げた」

(唯、響、尚の三人の視界から、すっかり消えてしまった成道)

尚「唯さんってば、まだ成道のこと苗字で呼んでるの?」

唯「は、はい。お名前では、なかなか呼べなくて…。いつも相沢さんのご機嫌を損ねてしまって…」

(そっと、ため息をつく唯)
(苦笑しつつ、ふたりの会話を聞いている響)

響「尚だって、ひとのこと言えないだろ。君も僕のこと…」

尚「そ、そうでしたぁ」

響「早いとこ、君付けやめてくれると嬉しいんだけどな。なんか俺が年下なの強調されてるみたいで…」

(愕然とした表情をする尚)

尚「えっ、そんな風に感じてたの?ご、ごめんなさい」

響「別に怒ってるわけじゃないんだ。泣かなくていいから。ほら、尚、涙拭いて」

(あたりにしばらくの沈黙の中、仕方なさそうに、おずおずと進み出てくる唯)

唯「え、えっと。いまおふたりは取り込み中なようです…。後ろを振り向けない事態に…ぼそぼそ…」

(何を言っているのか、…残念ながら聞き取れません)

唯「わたくし、ほ、保科唯からご挨拶を申し上げさせていただきます。
  皆様、あけましておめでとうございます。今年を素敵な年にしてくださいね。
  それでは簡単ですけれど、これでわたくしは失礼いたします」

(役目は終えたと、ほっとした表情で成道の消えた方向へと駆け出してゆく唯)

響「あ、唯さん。あーあ、行っちゃった。しかし、成道の野郎。ほんと相変わらず勝手なやつだな」

尚「お恥ずかしいところをお見せして、申し訳ありませんでした。遅れましたけど、おめでとうございます」

響「皆さん、おめでとう」

尚「お互い、ご馳走の食べ過ぎでお腹壊さないように注意しましょうね」

響「尚が一番危ない気がするな」

尚「響君ってば。あ…響君…ご、ごめんなさい」

響「もうなんでもいいよ、尚」

(尚の耳元に唇を近づける響)

「ふたり一緒にいられれば…それでいい」

尚「ボッ…」 (注釈:尚の頭のてっぺんからが出た音)

響「それでは、今年もやさしい風に含まれる全部の物語、そして『思いは果てしなく』をよろしく。
  相沢尚、そして葛城響でした」





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