|
『君色の輝き』編
誠志朗「可愛いな」
(芹菜の家まで、彼女を迎えに来た誠志朗の、玄関先に出てきた芹菜を見た第一声)
(真っ白のセーターに、赤いチェックのスカートを履いている芹菜。
セーターには、さきっちょにボンボンのついたリボンがついている。
誠志朗からの、クリスマスプレゼントの一部だ。選んでくれたのは誠志朗の母らしい)
芹菜「え、えっと…」
(愛しげに見つめられ、場所が自分の家の玄関なため、芹菜はどうにも照れて対応に困ってしまう)
(もじもじしている間に、芹菜の母悦子がキッチン方向から出てきた)
悦子「誠志朗さん、こんにちは」
誠志朗「どうも、こんにちは。お正月休みだというのに、頻繁に、芹菜さんを連れ出してしまってすみません」
悦子「いいわよ。真奈香の友達が、毎日入れ替わり立ち代りやってきて、
この家の中がシンとする暇なんかない状態ですもの」
(玄関先に並んでいるたくさんの靴を指さす悦子に応じて、
誠志朗も視線を落とし、靴の数の多さに苦笑する)
真奈香「おかあさーん」
(階段をドタドタと駆け下りてくる真奈香)
悦子「ここよ」
真奈香「あ、誠志朗さんいらっしゃい。お姉ちゃん、これから行くの?いってらっしゃい」
芹菜「あ、うん。行って来るね」
(これから透輝のマンションに行くことになっているせいで…なんとなく真奈香に対して後ろめたい芹菜)
(母と妹に手を振り、玄関を出て誠志朗の車に乗り込む)
誠志朗「芹」
芹菜「はい?」
(誠志朗に振り向いた芹菜。間髪おかず、誠志朗の軽いキスを受ける)
芹菜「!!!」
誠志朗「それじゃ…行こうか」
(突然のキスに頬を染め、ドギマギされられたことに、恨めしそうな視線を向ける芹菜)
(彼女の表情を苦笑しつつも満足げに見て、誠志朗、車を発進させる)
芹菜「ここ…ですか?」
(マンションの最上階の扉の前に立ち、高級感の漂う内装に、自分が場違いな気がして、
芹菜はひどく落ち着かない。それに引き換え、誠志朗は堂々としたものだ)
誠志朗「なんでこいつのところに、君を連れてこなきゃならないんだか…」
(納得出来ないせいで、ドアが開くのを待つ間、誠志朗が不平を言う)
(ファッションショーの時の、カノンとトウキの映像がテレビで報道されて以来、
他のテレビ局からの取材が加熱しすぎて、仕事の時以外、透輝はこの隠れ家に缶詰状態だ)
(透輝に泣きつかれて、しぶしぶ芹菜とともに顔を出すことを同意したのだが…)
(ドアが開く瞬間、以前ここに訪れた時のことを思い出して、誠志朗は思わず吹き出した)
芹菜「誠志朗さん?何がおかしいんですか?」
誠志朗「いや、ちょっと思い出したことがあってね」
(なんですか?という芹菜の問いの瞳を誠志朗は見なかったことにして、
開かれたドアから中に入り、やたら嬉しげな透輝の歓迎を受け、
どうしても我慢できずにまた吹き出してしまい、誠志朗は透輝に怪訝な顔をされてしまった)
芹菜「素敵な住まいね」
(透輝の部屋を物珍しげに眺め、昨日から泊り込んでいる真帆に芹菜は微笑んだ)
(透輝はキッチンで、紅茶を入れてくれているところだ)
真帆「まあね、男ひとりぐらしにしては、綺麗に片付けてるわよ」
芹菜「真帆さんの部屋とは大違いですね。真帆さんの部屋、足の踏み場もないくらい散らかって…」
真帆「芹ちゃんってば、余計なことを言わないの!…ちょっと宮島、得々とした嫌味な笑みするのやめてよ」
誠志朗「それは令嬢のうがった見方だろう。君の部屋が散らかっていようが、僕にはなんら関係ない」
真帆「関係ないのは関係ないわよ。わたしが言ってるのは、その、あんたの嫌味な笑みのことよ」
芹菜「真帆さんってば、誠志朗さんは嫌味な笑みなんかしてませんよ。真帆さんの言いがかりです」
真帆「あんたが視線を向ける瞬間、顔変えてんのよ。この、この、この………もういいわ」
(バンパイアとしか思いつけず、この場にマッチした言葉がどうしても思い出せない真帆、苦渋の顔で不満を飲み込む)
透輝「狼男だろ。真帆。はい、紅茶、あと芹菜と真帆のお気に入りのケーキもどうぞ」
芹菜「わあ、美味しそう。透輝、自分で買いに行ってくれたの?」
真帆「買いに行ったのはわたしに決まってるでしょ。
正月返上して、こいつのこと追い掛け回して捕まえようとしている暇な記者が、巷をうようよしてるんだから」
芹菜「そんなに…」
透輝「いや、そんなに多くないよ。
ただ、用心するに越したことないから。仕事以外は危ない橋渡りたくないだけ…
ここの生活、けっこう気に入ってるし、見つかったらまた引越しすることになるからさ」
芹菜「大変なのね。部屋から思うように出られないなんて、透輝かわいそう」
(芹菜の言葉に、勢いづく透輝)
透輝「うん。だからさ、芹菜、いつでも遊びに…」
誠志朗「藤城」
(腹にズーンと響くほど、低い誠志朗の声に、透輝が飛び上がる)
透輝「は、はいっ」
誠志朗「芹に…なんだって?」
透輝「い、いえ、おふたりで遊びに来てもらえたら、嬉しいかなぁ、なんて」
真帆「透輝ってば、宮島なんかに負けてんじゃないわよ」
透輝「そんな無理、言われても…」
(透輝の入れてくれた紅茶をゆったりと口に含んで味わった誠志朗、姿勢を正してこちらに向く)
誠志朗「新年の挨拶の時間だ。ずいぶんと遅くなったようだが…」
芹菜「そんな厳しい言葉を言っては、あの方が…かわいそうだと…」
真帆「何言ってんの。もっときちんと計画してれば、こんなに遅くなったりしなかったわよ」
透輝「真帆…?君、計画なんて無駄なものだっていつも言ってるのに…」
(真帆にぎっと睨まれ、のほほんと微笑んでいた透輝、ビクッと首をすくめる)
芹菜「真帆さんと計画という言葉くらい不似合いなものはないと、わたしも思います」
誠志朗「僕もその意見に賛成だな」
(にやにやしながら言う誠志朗。
真帆の睨みなどチクリとも感じないようで、平然とこちらに向く)
(ひどく悔しそうな真帆)
誠志朗「まあ、過ぎてしまったものをあれこれ言っても仕方がない。ではまず芹から…いくかい?」
芹菜「わ、わたしから…ですか?え、えーと、
あ、あの、み、皆様、明けましておめでとうございます。楠木芹菜です」
真帆「芹ちゃん、どもりすぎ…」
(呆れたように言う真帆に対して、誠志朗は手を伸ばし、芹菜の頭にそっと触れる)
誠志朗「どもってる芹も、可愛いから…」
(芹菜の顔が、お約束どおり、ボンと赤く染まる)
透輝「う・う・う」
(誠志朗の行動を目にして、変な声を出す透輝)
芹菜「えーと、今年もよろしくお願いします。
昨年同様、たくさんのことを経験して、もっと自分を変えてゆけたらいいなと思います」
透輝「芹菜はこのままでいいよ。何も変わらなくていい」
誠志朗「まあ、君のその案に、同意見ではあるが…芹の思うように生きればいい。
それじゃ、次、令嬢」
真帆「ひとは誰だって変わってゆくわよ。いつまでも同じでいるわけないじゃないの。
皆さん、おめでとうございます。渡瀬真帆です。
昨年はとんでもない事故に遭遇してしまって、わたしも人生を深く考える機会を得たわ」
芹菜「そうそうそうでした。わたしも同じです」
真帆「そうね。あの事故のおかげで、迷惑もこうむったけど…」
(真帆が小さく肩を竦める)
真帆「いい経験だったわ。今年もよろしくね。それじゃあ、次は透輝?」
透輝「ああ。皆さん、こんにちは。藤城透輝です。
昨年は俺も、自分の事務所を立ち上げたり…
マネージャーの河野には不満がないわけじゃないけど、
彼のおかげで面倒な事務手続きも終えられた。
真帆とも色々あったし、芹菜とも出会えて、人生の転機の年だったな。
久野監督にはやられてばかりだけど、実際、あのひとの無理難題な仕事のおかげで、
俺は大きく成長出来てる。
周りの人間に恵まれてるってこと、ほんと深く感謝してます。
まあ何はさておき、今年も、このメンバーと楽しい時間を過ごせたらいいなと思う。
では、最後に宮島さん」
誠志朗「どうも。あらためて、宮島誠志朗です。
昨年は、みなが特別なものであったと同じに、僕も深い年でした。
なにより、芹に、彼女に出会えたことが何にも変え難い。
今年も、色々なことが待っているんだろうけどね…」
(そう言って、苦笑しつつ芹菜に振り向く誠志朗)
誠志朗「新年を迎え、それぞれに新しい年を素晴らしいものにして欲しい。
やさしい風と、『君色の輝き』のメンバーをよろしく」
(誠志朗のお辞儀に合わせ、芹菜、真帆、透輝が頭を下げる)
≪どうもです≫
≪それぞれの新年の挨拶、楽しんでいただけたでしょうか?≫
≪君色メンバーもアップできて、ほんと良かった。これでほっとひと安心≫
≪では、今年一年、キャラ、そして皆様とともに、楽しんでゆきたいです≫
≪読んでくださってありがとうございました≫
fuu
|