2006年 新年のご挨拶



『君色の輝き』編



誠志朗「可愛いな」

(芹菜の家まで、彼女を迎えに来た誠志朗の、玄関先に出てきた芹菜を見た第一声)

(真っ白のセーターに、赤いチェックのスカートを履いている芹菜。
セーターには、さきっちょにボンボンのついたリボンがついている。
誠志朗からの、クリスマスプレゼントの一部だ。選んでくれたのは誠志朗の母らしい)

芹菜「え、えっと…」

(愛しげに見つめられ、場所が自分の家の玄関なため、芹菜はどうにも照れて対応に困ってしまう)
(もじもじしている間に、芹菜の母悦子がキッチン方向から出てきた)

悦子「誠志朗さん、こんにちは」

誠志朗「どうも、こんにちは。お正月休みだというのに、頻繁に、芹菜さんを連れ出してしまってすみません」

悦子「いいわよ。真奈香の友達が、毎日入れ替わり立ち代りやってきて、
    この家の中がシンとする暇なんかない状態ですもの」

(玄関先に並んでいるたくさんの靴を指さす悦子に応じて、
 誠志朗も視線を落とし、靴の数の多さに苦笑する)


真奈香「おかあさーん」

(階段をドタドタと駆け下りてくる真奈香)

悦子「ここよ」

真奈香「あ、誠志朗さんいらっしゃい。お姉ちゃん、これから行くの?いってらっしゃい」

芹菜「あ、うん。行って来るね」

(これから透輝のマンションに行くことになっているせいで…なんとなく真奈香に対して後ろめたい芹菜)


(母と妹に手を振り、玄関を出て誠志朗の車に乗り込む)

誠志朗「芹」

芹菜「はい?」

(誠志朗に振り向いた芹菜。間髪おかず、誠志朗の軽いキスを受ける)

芹菜「!!!」

誠志朗「それじゃ…行こうか」

(突然のキスに頬を染め、ドギマギされられたことに、恨めしそうな視線を向ける芹菜)
(彼女の表情を苦笑しつつも満足げに見て、誠志朗、車を発進させる)


芹菜「ここ…ですか?」

(マンションの最上階の扉の前に立ち、高級感の漂う内装に、自分が場違いな気がして、
 芹菜はひどく落ち着かない。それに引き換え、誠志朗は堂々としたものだ)

誠志朗「なんでこいつのところに、君を連れてこなきゃならないんだか…」

(納得出来ないせいで、ドアが開くのを待つ間、誠志朗が不平を言う)

(ファッションショーの時の、カノンとトウキの映像がテレビで報道されて以来、
 他のテレビ局からの取材が加熱しすぎて、仕事の時以外、透輝はこの隠れ家に缶詰状態だ)

(透輝に泣きつかれて、しぶしぶ芹菜とともに顔を出すことを同意したのだが…)

(ドアが開く瞬間、以前ここに訪れた時のことを思い出して、誠志朗は思わず吹き出した)

芹菜「誠志朗さん?何がおかしいんですか?」

誠志朗「いや、ちょっと思い出したことがあってね」

(なんですか?という芹菜の問いの瞳を誠志朗は見なかったことにして、
 開かれたドアから中に入り、やたら嬉しげな透輝の歓迎を受け、
 どうしても我慢できずにまた吹き出してしまい、誠志朗は透輝に怪訝な顔をされてしまった)


芹菜「素敵な住まいね」

(透輝の部屋を物珍しげに眺め、昨日から泊り込んでいる真帆に芹菜は微笑んだ)
(透輝はキッチンで、紅茶を入れてくれているところだ)

真帆「まあね、男ひとりぐらしにしては、綺麗に片付けてるわよ」

芹菜「真帆さんの部屋とは大違いですね。真帆さんの部屋、足の踏み場もないくらい散らかって…」

真帆「芹ちゃんってば、余計なことを言わないの!…ちょっと宮島、得々とした嫌味な笑みするのやめてよ」

誠志朗「それは令嬢のうがった見方だろう。君の部屋が散らかっていようが、僕にはなんら関係ない」

真帆「関係ないのは関係ないわよ。わたしが言ってるのは、その、あんたの嫌味な笑みのことよ」

芹菜「真帆さんってば、誠志朗さんは嫌味な笑みなんかしてませんよ。真帆さんの言いがかりです」

真帆「あんたが視線を向ける瞬間、顔変えてんのよ。この、この、この………もういいわ」

(バンパイアとしか思いつけず、この場にマッチした言葉がどうしても思い出せない真帆、苦渋の顔で不満を飲み込む)

透輝「狼男だろ。真帆。はい、紅茶、あと芹菜と真帆のお気に入りのケーキもどうぞ」

芹菜「わあ、美味しそう。透輝、自分で買いに行ってくれたの?」

真帆「買いに行ったのはわたしに決まってるでしょ。
   正月返上して、こいつのこと追い掛け回して捕まえようとしている暇な記者が、巷をうようよしてるんだから」

芹菜「そんなに…」

透輝「いや、そんなに多くないよ。
    ただ、用心するに越したことないから。仕事以外は危ない橋渡りたくないだけ…
    ここの生活、けっこう気に入ってるし、見つかったらまた引越しすることになるからさ」

芹菜「大変なのね。部屋から思うように出られないなんて、透輝かわいそう」

(芹菜の言葉に、勢いづく透輝)

透輝「うん。だからさ、芹菜、いつでも遊びに…」

誠志朗「藤城」

(腹にズーンと響くほど、低い誠志朗の声に、透輝が飛び上がる)

透輝「は、はいっ」

誠志朗「芹に…なんだって?」

透輝「い、いえ、おふたりで遊びに来てもらえたら、嬉しいかなぁ、なんて」

真帆「透輝ってば、宮島なんかに負けてんじゃないわよ」

透輝「そんな無理、言われても…」

(透輝の入れてくれた紅茶をゆったりと口に含んで味わった誠志朗、姿勢を正してこちらに向く)

誠志朗「新年の挨拶の時間だ。ずいぶんと遅くなったようだが…」

芹菜「そんな厳しい言葉を言っては、あの方が…かわいそうだと…」

真帆「何言ってんの。もっときちんと計画してれば、こんなに遅くなったりしなかったわよ」

透輝「真帆…?君、計画なんて無駄なものだっていつも言ってるのに…」

(真帆にぎっと睨まれ、のほほんと微笑んでいた透輝、ビクッと首をすくめる)

芹菜「真帆さんと計画という言葉くらい不似合いなものはないと、わたしも思います」

誠志朗「僕もその意見に賛成だな」

(にやにやしながら言う誠志朗。
 真帆の睨みなどチクリとも感じないようで、平然とこちらに向く)

(ひどく悔しそうな真帆)

誠志朗「まあ、過ぎてしまったものをあれこれ言っても仕方がない。ではまず芹から…いくかい?」

芹菜「わ、わたしから…ですか?え、えーと、
    あ、あの、み、皆様、明けましておめでとうございます。楠木芹菜です」

真帆「芹ちゃん、どもりすぎ…」

(呆れたように言う真帆に対して、誠志朗は手を伸ばし、芹菜の頭にそっと触れる)

誠志朗「どもってる芹も、可愛いから…」

(芹菜の顔が、お約束どおり、ボンと赤く染まる)

透輝「う・う・う」

(誠志朗の行動を目にして、変な声を出す透輝)

芹菜「えーと、今年もよろしくお願いします。
    昨年同様、たくさんのことを経験して、もっと自分を変えてゆけたらいいなと思います」

透輝「芹菜はこのままでいいよ。何も変わらなくていい」

誠志朗「まあ、君のその案に、同意見ではあるが…芹の思うように生きればいい。
     それじゃ、次、令嬢」

真帆「ひとは誰だって変わってゆくわよ。いつまでも同じでいるわけないじゃないの。
    皆さん、おめでとうございます。渡瀬真帆です。
    昨年はとんでもない事故に遭遇してしまって、わたしも人生を深く考える機会を得たわ」

芹菜「そうそうそうでした。わたしも同じです」

真帆「そうね。あの事故のおかげで、迷惑もこうむったけど…」

(真帆が小さく肩を竦める)

真帆「いい経験だったわ。今年もよろしくね。それじゃあ、次は透輝?」

透輝「ああ。皆さん、こんにちは。藤城透輝です。
    昨年は俺も、自分の事務所を立ち上げたり…
    マネージャーの河野には不満がないわけじゃないけど、
    彼のおかげで面倒な事務手続きも終えられた。
    真帆とも色々あったし、芹菜とも出会えて、人生の転機の年だったな。
    久野監督にはやられてばかりだけど、実際、あのひとの無理難題な仕事のおかげで、
    俺は大きく成長出来てる。
    周りの人間に恵まれてるってこと、ほんと深く感謝してます。
    まあ何はさておき、今年も、このメンバーと楽しい時間を過ごせたらいいなと思う。
    では、最後に宮島さん」

誠志朗「どうも。あらためて、宮島誠志朗です。
     昨年は、みなが特別なものであったと同じに、僕も深い年でした。
     なにより、芹に、彼女に出会えたことが何にも変え難い。
     今年も、色々なことが待っているんだろうけどね…」

(そう言って、苦笑しつつ芹菜に振り向く誠志朗)

誠志朗「新年を迎え、それぞれに新しい年を素晴らしいものにして欲しい。
     やさしい風と、『君色の輝き』のメンバーをよろしく」

(誠志朗のお辞儀に合わせ、芹菜、真帆、透輝が頭を下げる)




               ≪どうもです≫

≪それぞれの新年の挨拶、楽しんでいただけたでしょうか?≫

≪君色メンバーもアップできて、ほんと良かった。これでほっとひと安心≫

≪では、今年一年、キャラ、そして皆様とともに、楽しんでゆきたいです≫


        ≪読んでくださってありがとうございました≫

                                        fuu





                                
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