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白雪姫バージョン ハナ雪姫物語 (主演女優 ハナ)



 第16話なのにゃ





第16話 『王子様登場』



「さて、ガラスの棺とやらはどこだろうな?」

「小屋の近くにあるんじゃないかな」

ジェイはそういうと、小屋を回って行った。
聡も後に続き、もちろん美紅も小走りで後を追いかけて行った。

「手伝いがいるかもしれないな。僕も行って来よう」

吉永がみなの後を追い、綾乃も一緒について行った。

カメラを持ったまま、翔は葉奈と芝生の上に並んで座りこんだ。
翔は手伝いを買ってでるつもりはさらさらないようだ。

残るは、玲香と亜衣莉だけ。

玲香は、ころんと転がったままのハナに近づき顔を覗き込んだ。

「ねえ、ハナ。カメラ回ってないし、おきたら」

だが、ハナはぴくりともしない。なんか異常なものを感じる。

「ハナ。やだ。冗談やめておきなよ」

「ハナさんどうかしたんですか?」

側にいた亜衣莉が、心配そうにかがみこんできた。

「なんか、ぜんぜん反応ないの」

亜衣莉は、さっと手を出し、ハナの首筋に手を当てた。

しばらくして、亜衣莉が真っ青な顔をして手を引いた。
その手が激しくブルブルと震えている。

「ど、どうしたの?」

「脈が…ほ、ほんとに死んで…」

亜衣莉が腰が抜けたようにその場にしゃがみこんだ。

「兄さん、こっちきて。ハナが、ハナが」

「どうしたんだ?」

「脈が…ハ…ナ…ちゃん。い、息してません」

翔は手を伸ばしてハナの胸の辺りに触れた。

「せ、先生」

動転した葉奈が翔にすがり付いた。

翔は、なんともいえない顔で、首を横に振った。
顔が真っ青だった。

四人は、呆然として転がっているハナを見つめ続けた。

「おーい。ガラスの棺あったぞ」

聡の声がし、みなが戻ってくる足音が聞こえた。

「どこに置く?翔、どうした?」

「ハナが…ほんとに、死んだみたいなんだ」

聡が怪訝な顔をし、みなが息を飲む音がした。





「こんなことになるなんてな」

ガラスの棺に入ったハナを見つめ、翔が辛そうに言った。
彼の目は、泣いたために充血してしまっている。

みな、ハナに思い入れがあったぶん、涙を流し、辺りは暗く沈んでいた。

「ほんとの白雪姫なら、ここで王子様があらわれるんだろうけど…」

聡が淋しげに言った。

女性陣は、いずれも泣きすぎて言葉が出ないようだ。
しくしくとすすり泣く音だけが響く。

「王子様か…ハナにはボーイフレンドなんていなかったからなぁ。探してやっとけばよかった」

後悔のこもった弟の言葉に、聡は顔を歪め、慰めるように翔の肩に手を置いた。

「まったくだ。血統書つきの、ハンサムボーイあたりをな」

「ハナ、めんくいそうだもんな」

翔が辛そうに続けた。

そのとき、パカパカパカと、軽快な馬のひづめの音ともとれる、音が辺りに響き渡った。

「なんだ?いったい。ここには俺たちしかいないはずだろう?」

聡が音のする方向を伺った。

音はだんだん近づいてくる。

「馬…だよな。あの音どう考えても…」

「ああ。まさか王子様が現れたとかいうしんじゃないだろうな?」

「そ、そうかも。ハナは抜け目がないから、ちゃんと王子様を用意してたのよっ」

いまだ老婆の玲香は、目をイキイキさせて立ち上がり、音のするほうへすがるような視線を向けた。

泣いてばかりいた女の子たちも、それぞれ希望を胸に立ち上がった。

全員が音のする小道の向こうを眺めているところに、真っ白な馬が駆け込んできた。

白馬は、少し前足を上げ、小屋の前でピタリと止まった。

みんなは白馬にまたがっている人物を凝視した。

「みなさん、いったいどうしたのですか?」

真っ黒な…ネコが言った。

完璧に気品のある王子を演じきっているその姿に、みんな度肝を抜かれた。







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