冒険者ですが日帰りではっちゃけます



◇22 ティラ 〈慌ててしまってやっちゃいました〉


依頼を達成し、三人は無事ギルドに戻ってきた。

チームリーダーのゴーラドがギルドの受付に報告しに行き、卵と引き換えに報酬を受け取ってきた。

そして、差し出したティラの手のひらの上に、輝く金貨を一枚載せてくれる。

「うわーっ、キラキラですね」

魔鼠二百匹と、銀貨が五枚。さらには金貨一枚も稼いでしまった。
まだ初日なのに、上出来だ。

「これもゴーラドさんが誘ってくださったおかげです。ありがとうございました」

ティラは深々と頭を下げてゴーラドに感謝を伝えた。

「お礼を言われると、困るんだが」

その言葉に、ティラは戸惑って首を傾げた。

「困る?」

「回復薬もらっちまったし、トードルの卵を手に入れたのはあんただし、おまけに魔道具の入れ物までもらったわけだしなぁ。キルナさんが言ったように、この報酬は、全部あんたがもらってもいいくらいなんだぞ。ほんとにいいのか?」

ゴーラドさんが言うように、ここに戻ってくるまでに、キルナさんがそう言ってくれたんだよね。

けど、トードルがティラの知るトードルだったのは偶然だし、あの場所を知っていたのはゴーラドなのだ。ティラのおかげばかりではない。

回復薬のことも気にすることないし、ポーチももう使っていないのをあげただけ。なのに、キルナさんは、お借りした大銀貨十枚も返さなくていいというんだよね。ほんとにいいのかな?

「それじゃ、これから依頼達成の祝いをしないか?」

「祝いですか?」

すっごい楽しそうだけど……残念ながらもう戻らなければならない。

「ごめんなさい。わたしもお祝いしたいんですけど……日が暮れるまでに家に帰らないとならないので」

「家に帰る?」

「なんで?」

キルナとゴーラドはそろって眉をひそめる。

その反応、めっちゃ恥ずかしいなぁ。けど、帰らないわけにはいかないのだ。

「両親との約束で、日が暮れるまでに帰りつけなかったら、冒険者を続けられなくなるんです」

「はあ?」

「なんだそりゃ?」

ふたりの反応に、ティラはズーンと落ち込む。

呆れられちゃったみたいだ。

やっぱり、弁当持ちで家から通いの冒険者なんて変……だよね。自分でもそう思うもの。

だが、約束を守れなかったら、冒険者をやめなければならなくなる。それは嫌だ。

「そういうことなので、これで失礼します」

かなり落ち込みつつ、ふたりに頭を下げたティラだが、急いで言葉を付け加える。

「あ、あの、明日も来ますので、できればまたよろしくお願いします」

もう一度ぺこりと頭を下げ、ティラはその場を去った。

あの感じだと、ふたりとも、もう一緒に冒険してくれないかもなぁ。

しゅんとしつつギルドの外に出ると、もうかなり日が傾いていた。日が落ちるまであまり時間がないようだ。

ま、まずいっ! まだ余裕があると思ってたのに!

これはもう走っていたのでは間に合わないぞ。

初日から約束をたがえてしまったら、冒険者を続けられなくなってしまう。
言い訳など聞いてくれる両親ではない。

町中を走り、門から出たティラは、街道沿いのまばらな木々の間に駆け込むと、周りを気にすることもせず、ポーンと地を蹴り空へと躍り出たのだった。





つづく



 
   
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