クリスマス番外編
第4話 サバサバに苦笑



「芹菜」

頭を抱えている芹菜に、透輝が話しかけてきた。

「は、はい」

「君の友達だ。彼女は信用おけるんだろう?」

ええっ、そ、それって……まさか?

ほんとに正体をバラすつもりなの?

「で、でも……」

「うん? 何、何、なんなの?」

芹菜たちのやりとりに、由香里はふたりを交互に見る。

「おかしなやつが君の知り合いだと、彼女に思われては、君に悪い」

「そっ、そんなこと、気にしなくても」

「いやいや、気にするよ」

そう言ったのは、透輝ではなく由香里だ。

その瞳は、ずいぶんとキラキラしている。

意味深なやりとりをしてしまったせいで、由香里は、透輝にとんでもなく興味をもってしまったようだ。

「バラしたからって、たいしたことないさ。……それに彼女は、騒いだりするタイプじゃなさそうだし」

それはその通りだ。

「ええ」

芹菜は大きく頷いた。

相手が芸能人だとわかって、由香里がキャーキャー騒いだとしたら、それこそビックリだ。

透輝は、さっと周囲に目を配り、サングラスとマスクを外した。

「どうも、藤城透輝です」

淡々と告げる。

「うーん? ほんとに俳優の藤城トウキなんですか?」

「ああ」

透輝が頷くと、由香里は目を細め、透輝をじーっと見る。
どうやら本物を目にしても、由香里は本物なのか判断がつかないらしい。

「本物なのかな? 顔は似てるようだけど」

「山ちゃん、彼をあんまり知らないとか?」

「うん。実はそう。芸能人とかって、あんまり興味なくってさ。スポーツ選手はけっこう知ってるんだけど」

由香里が申し訳なさそうに言い、透輝が軽く噴き出す。

「芹菜、素敵な子と友達になったじゃないか?」

透輝の中で、由香里に対する好感度は、一気に上がったらしい。

「それって、褒めてます?」

由香里は判断するように透輝に問う。

「もちろんさ。これからも芹菜をよろしく」

「はい。よろしくさせていただくつもりですが……芹菜の知り合いの婚約者っていうのは、ほんとなんですか?」

透輝は黙って頷く。

「でも、婚約者である彼女の知り合いの芹菜に、こうやって会いにくるくらい、あなたは芹菜とも仲がいいわけですか?」

「仲はいいよ。それに、ここに来たのは、これから彼女のところに行くから、一緒に行かないかと誘いにきたんだ」

「真帆さんのところに?」

そういうことだったのか。

でも、真帆さんはいま仕事中で……

あ、ああ、そういうことか。

透輝は、自分ひとりでは会社に行けないものだから、わたしを誘いにきたわけだ。

芹菜は、真帆と誠志朗が配属されている職場でアルバイトをしたことがあり、同じ職場の社員たちとも顔見知りなのだ。

せっかくのオフなのだから、透輝にすれば、真帆と少しでも長く一緒に過ごしたいに決まっている。

ならば、喜んで協力してあげるとしよう。

それにしても、真帆さんも変わったものだ。

以前の真帆は、仕事にたいしてとんでもなく不真面目だった。

真帆さんは、あの入れ替わり騒動以降、凄くいい方向に変化したのよね。なのにわたしは、真帆さんのようには変われていない。

「何をため息ついてんの?」

由香里に指摘され、知らずため息をついていたことに気づく。

「う、うん。ちょっと、自分を反省してしまって」

「なんで、いま、反省?」

不思議そうに言った由香里が、ケラケラ笑い出す。

見ると、透輝まで笑いを堪えている。

芹菜は顔を赤らめてふたりを睨んだ。

すると、由香里が芹菜の肩をぽんぽんと叩いてきた。

「なんか悪かったね」

「う、ううん」

首を横に振ると、由香里は芹菜と透輝からさっと離れた。

「それじゃ、真帆さんってひとによろしく。芹菜、またね」

「あっ、山ちゃん」

由香里がすぐにも行ってしまいそうになり、芹菜は慌てて呼び止めた。

「なあに……ああ、大丈夫だよ。誰にも言わないから」

「そうじゃないの。……いえ、もちろんそうしてほしいんだけど……呼び止めたのは、さっきの大学のパーティのことなの」

「うん?」

「また詳しく話を聞かせて欲しいなって思って。予定がなくなったら、参加させてもらうかも」

「えっ! そうなの? 別にこっちはいいけど……。まあ、わかった。それじゃ、また明日ね」

「うん。バイバイ」

由香里は背を向け、すぐに走り去って行った。

「なんか、サバサバした子だな」

遠ざかって行く由香里を見つめ、苦笑しながら透輝が言う。

芹菜は頷き、彼に笑い返した。





プチあとがき

クリスマスの昨日、更新できずで、
すでにクリスマスも終わってしまいました。

そんなことですが、今日、なんとか2話、続きを更新できました。

しかし……誠志朗がまだ出てこない。

それにしても、これって何話で終わるんだろう?

書いてる本人がわからない。笑

けどまあ、皆様に面白く読んでもらえていれば、
それでいいかなんて思ったりしています。

とにかく、続きは来年のクリスマスに……なーんてことにはしたくないので、ガンバリます!

fuu(2014/12/26)
   
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