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24 捜索完了
手がかりを手に入れた三人は、車に乗り込み、さっそく紙に書いてある住所に向かった。
なんかドキドキしちゃうなぁ。
聞き込みして、その度に何かしらの手がかりを手に入れて、どんどん森村って人に近づいてく感じ。
そしてついに森村さんの家を探し当てた。
いよいよご対面だぁ。
苺は会ったことのない人なんだけど、すっごい楽しみだ。
どんな人なんだろうなぁ?
「ねぇ、爽」
「なんです?」
「森村さんってどんなひとなんですか? 爽はあったことがあるんでしょう?」
「いえ、ありませんよ」
へっ?
「け、けど……連絡が取れるのかって、藍原さんに聞いてたし」
「要からの報告で、森村については情報として知っています。実際に会っているのは要だけですよ」
なんだ、そうだったのか。
「それなら……藍原さん、森村さんはどんなひとなんですか?」
「才能のあるひとですよ」
「それって陶芸の才能ですか?」
「ええ」
「性格とか見た目はどんな感じの人なんですか?」
「性格は……消極的ですね。見た目の特徴は、作業服ですね。それとおさげ」
「おさげ?」
「いつもおさげなのですよ。それで黒縁の眼鏡をかけておいでです」
「へーっ」
苺は頭の中で、おさげで黒縁眼鏡、作業服姿のひとを思い浮かべてみる。
けど、それは仕事中の姿ってことだろうな。
藍原さんは、仕事中の森村さんとしか会ったことがないのだろう。
森村のアパートには、十五分ほどで到着したのだが……なんと森村はすでにアパートを引き払ってしまったようだった。
人の住んでいる気配がない。
「参りましたね」
「大家に会いに行くとしよう。たぶんこちらの二階家がそうだろう」
爽は同じ敷地内にある一戸建ての家を見つめて言う。
「それならば、鈴木さんだけでお伺いした方がいいかと思いますよ。友人だと告げれば、森村さんの情報を得やすいでしょうから」
「そうだな」
爽は相槌を打ち、苺に「やっていただけますか?」と聞いてくる。
友人という嘘をつくのは、ちょっと抵抗あるけど……森村さんを探し出すため。
盗みを働いたってことでクビにされた森村さんだけど、藍原さんも爽も彼女はそんなことはしていないと思っているようだ。
ならば、森村さんを探し出して、苺も窮地を救ってあげたい。
将来的に友達になれば、嘘じゃなくなるしね。
「もちろんやるですよ」
力いっぱい頷き、苺は大家さんの家にひとりで向かった。
ありがたいことに大家さんはご在宅で、自分は(将来的に)森村さんの友達だと言ったら、信じてもらえた。
森村さんについて聞くと、なんと昨日出て行ったばかりだという。
なんてこった、だよ。
「いま、森村さんがどこにいるのか、大家さんはわからないですか?」
「ここによく訪ねてきていた大野さんのところに、しばらくやっかいになると言ってたわ」
「その大野さんの家って、大家さんは知らないですか?」
「知ってますよ。ほら、あそこにちょっとだけ見えてるアパートよ」
ええっ!
苺は驚いて、大家さんの指さす方向を見る。
「どれですか?」
「あれよあれ」
あれと言われてもはっきりとはわからない。
アパートの名前を教えてもらい、苺は大家さんにお礼を言って、意気揚々と爽と藍原の元に戻った。
「やりましたよっ」
破顔して言ったら、ふたりとも安堵の表情を浮かべた。
そしてさっそく、大野というひとのアパートへ向かう。
大野のアパートは、森村のアパートとはまったく雰囲気の違う、ずいぶんこじゃれた感じのアパートだった。
「102号室……ここですね。明かりがついていますし、留守ではないようですね。森村さんがいるといいのですが」
大野と表札のかかった部屋を確認し、藍原はそう言って呼び鈴を押した。
「はーい、どちら様ぁ?」
ドアの向こうから返答があった。甲高い女の人の声だった。
「私は藤原カンパニーの藍原と申します。大野様のご友人である森村小梅さんについてお聞きしたく、やってまいりました」
「藤原カンパニー?」
「ええっ!」
なにやら驚きの声が、ドアの向こうで上がった。
すると藍原が意味ありげに爽に目を向ける。
およっ? もしや、いまの驚いた声が森村さんなんじゃないのか?
そう思っていたら、ドアが恐る恐るという感じで開けられた。
おさげに編んだ髪がまず目に入った。
そして黒縁眼鏡の大きなレンズには、まん丸になった目。
ほっ、ほんとだぁーーーっ。
おさげに黒縁眼鏡だよっ。
このお方は森村さんでしかない‼
つづく
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